排尿障害
膀胱と尿道(男性では前立腺を含む)、および尿道括約筋で構成される下部尿路には、尿を貯める機能(蓄尿機能)と尿を排出する機能(排尿機能)があります。これらの機能が障害された状態を排尿障害といいます。
症状としては頻尿?尿失禁?排尿困難?尿閉といったものがあり、どの症状も生活の質(QOL)を著しく損なうと言われています。最近ではこれらの症状を訴え、外来を受診される方が増加しています。
蓄尿機能障害には、過活動膀胱、腹圧性尿失禁、夜間頻尿などが含まれ、排尿機能障害には前立腺肥大症や低活動膀胱などが含まれます。
以下にそれぞれについて簡単に解説します。
症状
過活動膀胱
過活動膀胱とは、膀胱の活動が異常に亢進するために、尿意切迫感?頻尿?切迫性尿失禁などの症状が出現する疾患です。質問用紙を記載して頂き、内服薬で治療することが多いです。
腹圧性尿失禁
咳やくしゃみをした時のように突然おなかに力が入って腹圧が上昇すると、抑えようと思っても尿が不随意に漏れてしまう疾患です。普通は女性に特有の病気で、成人女性の4人に1人がこの症状を自覚していると言われています。原因としては女性の尿道を挙上支持している骨盤底筋が、出産?加齢?女性ホルモン低下などで脆弱化することが考えられています。治療法としては骨盤底筋体操や薬や手術があります。
夜間頻尿
夜間睡眠中に尿意のため目覚めトイレに起きるようになることが夜間頻尿です。夜間に2回以上起きると生活の質に影響すると言われており、高齢者の夜間転倒骨折の原因のひとつになっています。原因としては大きく3つあり、多尿(尿が多い)、膀胱蓄尿障害(尿が貯められない)、睡眠障害(眠れない)があります。排尿日誌という尿の日記を記載して頂き、それぞれの原因に合わせた治療にあたります。
前立腺肥大症
前立腺は男性にしかない生殖器の一つで、前立腺液といわれる精液の一部を作り、精子に栄養を与えたり、精子を保護する役割を持っています。前立腺は膀胱の出口で尿道を取り囲んでおり、前立腺が肥大すると尿道が圧迫されて、様々な症状がみられます。治療は大きく分けて経過観察、薬物療法、手術があります。
低活動膀胱
排尿する際に膀胱の収縮が障害されたものです。病因としては、糖尿病による神経障害、骨盤内手術による末梢神経損傷などがあります。排尿状態を把握する為に、膀胱や尿道の働きを詳しく調べるための検査法であるウロダイナミクスを含めて必要な評価を行い、治療方針を決めます。高度な場合には自分で全く尿を出すことができずに自己導尿(カテーテルを入れて尿を出す治療)が必要になります。