病気の原因物質を酵素触媒反応へ応用

―認知症や糖尿病の原因となるアミロイドを活用してこれまで実現が難しかった酵素反応を可能にする方法を開発―

発表日 365体育app7年4月2日(水)

発表のポイント

  • アミロイドを酵素触媒反応に組み合わせた物質合成方法論を開発した。
  • これまでの酵素触媒では合成することが難しかった物質を取得することが可能になった。
  • 本研究は、医薬品合成などのさまざまな物質生産分野で利用できることが期待される。

発表内容

 和歌山県立医科大学 薬学部 相馬 洋平 教授、澤崎 鷹 助教、佐々木 大輔 講師らの研究グループは、認知症や糖尿病などの原因物質として知られているアミロイドを活用することにより、酵素触媒反応に新たな選択肢を提供できることを発見しました。この方法により、これまでの酵素触媒では合成することが難しかった物質を取得することが可能になります。

 酵素は、生体内の化学反応および医薬品などを合成するための化学反応を触媒する、我々にとって必要不可欠な存在です。今回、ペプチド(アミノ酸の集合体)が積み重なって形成される繊維状凝集物であるアミロイドを利用することにより、酵素触媒の反応パターンを変化できることを発見しました。具体的には、アミロイド認識構造を基質に組み込むことにより、BL7 と呼ばれるペプチドからなるアミロイドが基質と結合し、接近する酵素から基質を保護することができました。構造解析研究を通して、BL7に存在する二つのベンゼン環が基質の保護効果にとって特に重要であることも明らかになりました。これにより、アミロイド認識構造に近い基質部位はアミロイドによって保護され、アミロイド認識構造から遠い基質部位は酵素によって作用を受けるという新たな物質合成システムが生まれました(図1)。さらに、天然に存在するアミノ酸の一種であるチロシンの側鎖を利用すればアミロイド認識構造に変換することができるため、本手法は自然に存在する通常のペプチドに対して適用することも可能です。アミロイドを組み合わせたこのような酵素触媒反応は、物質生産のための新たな選択肢を提供し、医薬品合成などのさまざまな分野で利用できる可能性があります。

病気の原因物質を有機化学へ応用

図1:アミロイドを酵素触媒反応に組み合わせた物質合成方法論

論文情報

雑誌名: Nature Communications

題 名: Amyloid-reoriented enzyme catalysis

著者名: Taka Sawazaki*, Fuma Murai, Kai Yamamoto, Daisuke Sasaki, Youhei Sohma*

DOI: 10.1038/s41467-025-58536-5

URL: https://www.nature.com/articles/s41467-025-58536-5

研究助成

 本研究は、科研費「基盤研究B(課題番号:JP24K02153)」、「学術変革研究(課題番号:JP24H01787)」、「若手研究(課題番号:JP23K14325)」、「基盤研究C(課題番号:JP24K09344)」、「公益財団法人アステラス病態代謝研究会」、「公益財団法人 篷庵社」、「公益財団法人 武田科学振興財団」の支援により実施されました。

問合せ先

(研究内容については発表者にお問合せください)

和歌山県立医科大学薬学部
教授 相馬 洋平(そうま ようへい)
Tel:073-498-8543
E-mail:ysohma@wakayama-med.ac.jp

和歌山県立医科大学 事務局広報室
Tel:073-447-2300(代表)
E-mail:kouhou@wakayama-med.ac.jp

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